夏の曲  吉沢審一作曲



   古今和歌集から夏の歌四首を取り、前唄ー手事ー後唄の三段形式になっています。

   調子は雅楽調を取り入れた古今調子です。


   

   いそのかみ、古き都のほととぎす、声ばかりこそ、昔なりけれ

   夏山に 恋しき人やいりにけん、声ふり立ててなくほととぎす
  
(はちすは)
   蓮葉の濁りにしまぬ心もて、何かは露を玉とあざむく
               
(かよいじ)
   夏と秋と行きかう空の通路は、かたへ涼しき風や吹くらん



   

   
奈良の石上寺に来て時鳥の声を聞くと、古い都はさびれて変わったが、

    そこで鳴く時鳥の声だけは昔と変わらず美しく鳴くのであるよ

   夏山に時鳥の恋しく思う人が籠ったのであろう。その悲しさに大声をはり上げてないている

   蓮は泥中に生い立ちながら、泥水の濁りに染まない潔白な心を持ちながら

   何で葉の上に宿った露を玉と人目を欺いてみせるのか

   暮れて行く夏と引き換えに来る秋とが往きかいする空の通う路は

   秋の通ってく片方の空だからさぞ涼しい風が吹くことでしょう


   ★注 「ならのいその神寺」:奈良県山辺郡波市にあった素性法師の住寺。


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